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2023-05-06

HOUSE OF PATH AND WALL

HOUSE OF PATH AND WALL
Completion: 2022
Location: Saitama, Japan
Design: Masafumi Sumiyoshi, Akira Nomoto / FARO DESIGN Inc.
Structural Design: Kenta Masaki, Ryo Fuse / Masaki Structural Laboratory
Equipment Design: Takeshi Osawa / Comodo
Construction: Kera koumuten
Photo: Shigeo Ogawa

道と囲いの家
竣工:2022年
場所:埼玉県
設計監理:住吉正文、野本陽 / ファロ・デザイン有限会社
構造設計:正木健太、布施凌 / 有限会社正木構造研究所
空調衛生設備設計:大澤武史 / 有限会社Comodo設備計画
施工:株式会社解良工務店
写真:小川重雄

この家に架けられた屋根に登ると、郊外型ショッピングセンターとその広大な駐車場を見渡すことができる。これは、この敷地が住居専用地域の外周部に位置し、商業地域の間近に迫る立地にあるためであり、この眺望は見る者に独特な視点を与えている。

この敷地は、商業地域に近い立地であるが、閑静な住宅街の中にあり、広めの道路に面している。施主からの依頼内容は、仕事の合間に、家族や友人知人と一緒に休息をとるための車庫付きの余暇住宅であった。要望には露天風呂も含まれ、森や海辺の立地であれば容易であるが、住宅街ではその開放性の確保が難しく課題となった。そこで、露天風呂を屋上に設けて眺望を空へ放ち、そのためのプライバシー保護は敷地一杯に背の高い囲いを巡らすことで解決した。そして、この囲いを耐力壁として地震や風に抵抗させるため、鉄筋コンクリート造とした。このことにより、囲いの内側の空間では、鉛直荷重のみを負担する最小限の柱で支える構造が可能となり、鉄骨によるスキップフロアやヴォールト屋根の軽やかな空間が実現した。

冬季における南側からの日射取得を考慮して、鉄骨部分のグリッドを外周部の囲いのグリッドから45度傾けた。また、この傾きが作る直交しない壁の効果として、視覚的に鈍角でズレ進むような、鋭角ではズレ戻るような、奥行きのある感覚が生まれることを意図した。この感覚は、通路を移動する際や三角の中庭の緑化された壁面を見る際などに感じることができる。また、囲いには、来訪者の意識を閉じるだけでなく、上空へ向かわせる効果もあると考え、空から届く日照や風雨の移り変わりなど気象の変化を身近に感じさせるため、室内を取り囲むように数多くの屋外空間を設けた。

一般的な住宅の屋外空間は、主役の居間に対してベランダが脇役であるように、屋内の用途に対して機能が二次的であることが多く、単独では十分に活用されない。そこでこの家では、屋内と屋外の間の主従関係をなくして等価に扱い、屋外空間を室内から自立させる建築を目指した。そのための策として、門扉から屋上まで続く道を設けた。移動だけが目的ではなく、風景が次々と移り変わる路地のような、そして、来訪者がその移り変わりによって空間認知の鮮度を常に保つことができるような道を目指した。また、近くに住む施主が息抜きで本邸から外出する際に、散歩の延長でこの家を訪れ、室内に入ることなく屋上まで散歩し、そのまま帰宅することができるという気軽さもこの家にはあり、これこそがこの家の特徴であり魅力なのかもしれない。

ヴォールト屋根を断熱のために緑化することで丘のような屋上を作り、その頂上を囲いより少しだけ高くした。来訪者はこの開放的な屋上から周辺を一望することが可能で、その際に東京近郊における自家用車を中心とする生活の全貌を把握できているかのような錯覚を抱くこともある。その丘から降りて囲いに守られる高さまで下れば、一転して現実的な生活風景から切り離され、空や天気の静寂さと向き合うことができるようになる。この家が、雑多な日常と来訪者との距離を調整し、来訪者の五感の感度を回復させることを期待している。

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